底辺の見方、上からの見方

日本社会の底辺層のモノの見方、ちょっと上の層のモノの見方のお勉強

実質賃金とリフレ政策について少しだけ

民放初の9党の党首討論がたった1時間の枠で終わりました。民放はCMがあるわけで。9党も集まって、なおかつ、与党をおおっぴらに責める事が出来ないとなれば、1時間枠なんてあっという間。思った通りの結果になった。

自民のテレビ局への脅しで、各議員はフリップが使えない。それは、わかりやすく公表データを図にして与党を責める事が出来ない、ということ。なぜなら、フリップが使えない(データで話が出来ない党)に対して、不公平だからだ。その実データを使わないでアピールしたいのが自民党というか、アベノミクスの成果を訴えたい安部総理なのだが、思わぬ発言が出たので、ここで紹介。

 

賃金のUPが成功した、という事を何度も主張きたアベノミクス政権。しかし、発表データでは実質賃金は低下し続けている。この事をアベノミクスが民衆を苦しめているのではないか、という指摘に対して、安部総理は

「我々は100万人の雇用創出に成功した。ただ、最初はパートなど賃金が低い所からスタートになるので、個人の賃金は低い。しかし、国民総雇用者としては報酬は増えた」

というのだ。いわゆる、リフレ政策だ。

また、GDPのマイナスについても安部総理は、

「賃金の2%UPに成功した。ただ、消費税3%UPに対して十分ではなかった」

とした。この2つを発言を考えてみたい。

 

労働者総賃金はUP(国民総所得数UP)。低賃金の労働者数UP(雇用創出)。若干インフレ気味。で、実質賃金が下がる。これはこういう計算なので仕方が無い。問題は、これが実体経済としてどうなるのか、だ。

 

小泉政権時の非正規雇用枠拡大政策を思い出して欲しい。それによって安い人件費で人を雇う事が出来、様々な新ビジネスが生まれ、圧倒的な利益率を確保出来るIT企業は躍進した。貧困層は増えたが、ホリエモンなどの富裕層は増えた。

 

そして今。新たなリフレ政策により、100万人の雇用創出がなされ、実質賃金が下がる。安い賃金で人材確保が出来るようになれば、また新たな産業が生まれ、経済が上向き、国民全体が潤うはずだ。そのように上手くいくのだろうか。

 

失業者が増え、労働者も減っている実質賃金の低下とは違い、アベノミクスのリフレ政策での実質賃金の低下は政策の第一歩が成功しているのように見える。理想的には総賃金A、既存労働者数B、新たな低賃金労働者数C、消費者物価指数Dの中で、Aは微増(この微、の部分が低賃金雇用費)、Bは固定、Cの増加、Dは固定、もしくは微増だと思う。しかし、12年7~9月期に3327万人だった正規雇用の労働者数は、14年の7~9月期には、22万人減少。一方、非正規雇用の労働者数は、123万人拡大し、1952万人に達した。実質の雇用者報酬は、4320億円減少し、61兆8507億円に落ち込んだ。失業者数を見る限り、単純にはBからCへ移行した労働者が増えたとも考えられるのだ。そして、富裕層は9万人増え、約237万人に増えた。

 

それでも、だ。アベノミクスで大量に増えた低賃金労働者を使う事で企業がまた新たなビジネスを創出することで、失業者も減り、国民全体が豊かになるのだろうか。

労働者賃金へのメス入れは非正規労働者だけはない。正規雇用者にも向いていて、既得権益化している既存正規雇用には票があるのでメスを入れず、地域限定社員等の新たな低賃金正規雇用制度を創りだした。この事でさらに企業は安く労働力を確保出来、ビジネスが拡大。そして最終的には国民全体が豊かに。

 

この、最終的に国民が豊かになる、というのが想像が出来ないのだ。この前提として、豊富な低賃金労働者を確保出来る事で企業が成長する事が前提となるわけで、そこには需要が必ず必要になる。

この政策というわけではないが、理論的には同じやり方で急成長したのが中国だ。低賃金を背景に世界の工場として機能し、中国には富裕層、超富裕層が増えた。これだけ見ると、リフレ政策は成功のように見える。しかし需要増で賃金がUPした事でグローバル企業は工場を中国から更に安い地域に移す事になった。GDPの急激な伸びも止まった。では、中国国民は総じて豊かになった、と見えるだろうか。確かにこの機会に倉庫に特化したり、ソーラーシステムに特化して地域興しをした、為政者が優れていたおかげで地方もあるが、多くの地方は都市部との格差に苦しんでいる。

 

アベノミクスによって一部の人は確実に豊かになる。果たして、それが国として目指す豊かさなのだろか。富裕層、超富裕層が増え、ワーキング・プアが社会にとって必要な存在として確立され、失業者が減り、国民総所得が増える。とりあえずこの状態が長く続く事は間違いない。