底辺の見方、上からの見方

日本社会の底辺層のモノの見方、ちょっと上の層のモノの見方のお勉強

まるか食品「ペヤング」のゴキブリ混入のテレビ報道の違和感

カップ焼きそばの「ペヤング」にゴキブリらしき虫が混入していた件。写真を見たが、乾麺の中に絡まっていた。当初はネットの情報なので個人的判断は保留していた。

ペヤングの製造元まるか食品は当初、「通常の製造工程上、このような混入は考えられない」と声明を出していたが、結局、「混入を否定出来ない」として全商品回収となった。たった一人の消費者の告発が企業のずさんな衛生管理を暴露する事となった、画期的な事案であった。

海外の不衛生な鶏肉工場の映像の時とは大違いの反応

 さて、その後の報道はどうだったか。食の安全をある意味異常なまでに盛り上げてきたテレビだ。さぞ、まるか食品は叩かれるのか、と思いきや。コメンテーター陣を使って(日本にはなぜコメンテーターがいるのか、という問題は後日)擁護を言わせまくったのである。「全品回収は誠意ある対応だ」とか、「食品なんだから完全にこういった事を防ぐ事は出来ない」とか。しまいには、「僕は回収になっていなかったら気にしないで食べますよ、好きだから」と言う者まだ出てきた。そもそも、情報のタイトルが本来なら

・「人気商品に隠されたずさんな衛生管理」

・「消費者の告発によって暴かれた衛生管理」

ぐらいが適当だと思っていた。しかし、実際は

「人気商品が棚から消えた」

が最も多く、お決まりの街頭インタビューも、虫混入についてではなく、「ペヤングが回収されて買えなくなりますが、どうですか」という内容。

誠意ある対応、というのであれば、今や工場内の映像がテレビのコンテンツになる時代。まるか食品が現在のペヤングの製造工場内を見せて、「現在こういった形ですが、それでも混入は否定出来ない」というのがまさに誠意ある対応だ。しかし、番組によっては日本乾麺製造協会の他者の資料映像を流していた。その資料映像の工場内はいわゆる、工場内を紹介する番組に出るレベルの清潔さ。しかし、真意はわからないが、実際のペヤング製造工場はテレビで紹介出来ないほど汚い、という(写真がネットで公開されている)。であれば、報道は工場に直撃し、工場内を晒すべきだろう。実際、過去に食品偽装があった肉の工場やうなぎ等、中小零細企業にも関わらず、工場内映像を動画で取材していた。衛生の問題としては、海外工場で鶏肉を汚い床に落としていてもそのまま使う、という映像がネットで流れた時、そのままテレビはボカシを入れて流していた。しかし、まるか食品は、である。

しまいには、勇気ある告発をしたユーザーを叩く者まで出てきた。「食品ならこういった事はありえる。それをたった一人の告発でダメになってしまうのはいかがなものか」というのだ。これにネットの一部のユーザーも乗っかった。大企業のずさんな衛生管理を突いた、勇気あるユーザーの告発が讃えられるどころか、少数でも同じネットユーザーが叩く事によって、今後こういった行動を取る正義感あふれるユーザーが減る可能性がある。日本はもともとありとあらゆる分野で隠蔽体質である。これは今アメリカでタカタ製エアバッグのリコール問題を問われている議会での証人尋問で、「なんで隠していたんですか」と何度もするどく突っ込まれていたシーンでも、日本人特有の文化とも言える。

例えば、この虫ツイートをした人がネットでバラさず、消費者問い合わせに連絡しただけだとしよう。本人は手厚いサポートを受け、発表もされず、それで終わり。工場の衛生管理はそのままで、また同じような事が起きる。

それに比べ日清の冷凍パスタにゴキブリらしき虫が混入していた件に対しての対応は早かった。ネットにさらされたわけではないのに、すぐ発表し、回収処置。これこそすばやい対応。はじめに「あり得ない」と否定してあたかもユーザーの自作自演を匂わせた、まるか食品とは違った。

 

自らの考える事をしない人間は容易にテレビに操られる。ニュースの内容はコンプライアンス的に嘘を流せなくても、該当インタビューやスタジオ内のコメンテーターによって、「あくまでも個人の意見」として流し、ニュース全体の印象をがらっと変えて消費者心理を操作してくる。

 

日本はホント怖い世の中になった。