底辺の見方、上からの見方

日本社会の底辺層のモノの見方、ちょっと上の層のモノの見方のお勉強

爪楊枝事件の19歳少年のテレビでの叩かれっぷりが半端ない件

無駄に出演しているコメンテーター、タレント含め、youtubeに自作自演と思われる犯罪行為をUPしていた少年の事件に対するコメントが酷い。当人は今日、生活保護を受けて生活していた事も報道され、さらにくそみそのように言う年配のコメンテーターもいる。

テレビに出演している人間は皆口を揃えて、ネット世界=バーチャルの世界、という。私はかねてからネット世界と現実世界というのは活動の「場」としての言葉であって、同一人物である限り、人間を表現するのに使われるべきではない、と思っている。つまり、すべて人間の行為であるかぎり、ネット世界、バーチャル世界などは存在せず、すべてそれが今の現実世界なのだ。

 

彼がやった事は自作自演の疑いが濃厚との事。つまり、今のところ住居不法侵入しか罪が無いのだ。それなのにここまで叩かれるのはなぜなのだろう。それは少年がネットを利用したからだ。多くのタレントや年配コメンテーターが模倣犯が現れる、などと言っており、実際にそうした行為があったらしい。そうした社会を乱すような行為をするきっかけを作った、とそれさえもこの少年のせいにしていた。

 

はっきりいって、犯罪を犯す人間は犯す。犯さない人間は犯さない。この少年の動画で犯罪を犯さない人間が犯すようになったら、それこそ催眠効果動画で画期的ではあるが、そんな事はない。つまり、この少年に模倣犯を生んだ責任を問うのはお門違いなのだ。法治国家である以上、罪状のみで彼を判断すべきであり、それ以上それ以下でも無い。

 

むしろ、19歳の少年をここまで追い込んでしまった社会のあり方はいかがなものか。何度も書いている事だが、孤立している人間は社会活動が無いので、物事を自分と社会への対比でしか判断出来ない。通常の人は自分、仕事、家族、仲間、恋人、趣味など色々優先事項、考える事があるが、貧困状態だと更に考える事は少なくなる。孤独で貧困。そうした状態の人間が自分に自信を持つ事は困難であり、対社会でしか自分を判断出来なくなると、アイデンティティの崩壊を起こす事もある。

 

ネットに次々上がる動画は彼の叫び声としか私は受け取れな い。助けて欲しい。誰か手を差し伸べて欲しい。そんな悲痛な叫び。孤独で孤立している中、周辺は成人式で盛り上がる時期だ。生活保護を受けている少年がそんな余興を楽しんだとは思えない。むしろネットのお陰で彼は自 殺したり、もっと重大は犯罪を犯す事を阻止出来たのではないだろうか。

 

この少年を叩くテレビに出演している人達とネットで匿名で叩く人達。私はこの件に関しては総攻撃、という意味ではそんなに質は変わらないと思う。ネットに闇など存在しない。あるのは人間の闇だ。その闇をまともに受けるのは社会の弱者からだ。そんな事もわからない人が教育評論家を気取って仕事をしている時代だ。今の日本で子供を育てている人って本当にすごいな、と思う。