底辺の見方、上からの見方

日本社会の底辺層のモノの見方、ちょっと上の層のモノの見方のお勉強

京浜東北線で包丁を出した老人について。私の経験から。

優先席でタブレット端末を使用していた会社役員の男性に住所不定、職業不詳、寺谷正澄容疑者(71)が「優先席で使っているんじゃねぇ!」と男性の肩を小突く。男性が「殴る事ないだろ!」と詰め寄った所、老人は包丁を取り出したという。

 

さて、この老人はいったい何をしたかったか、というと、

「自分は正しい。正論だ」

という事を主張して相手をやり込めたかっただけなんですよね。実はこういった思想、行動は底辺層にありがちな発想なのです。というのも、底辺層は社会から孤立している人が多く、人と会話する事もなければやる事も無いのでパワーが余っている事が多い。ここで言うパワー、というのは精神的なモノも含みます。そして相対的に自分が底辺である、と認識してしまうと自己憐憫にとらわれてしまう事も多い。そうなると、自分は社会では底辺ではあるが、部分的には俺を見下しているお前らよりもしっかりしているんだ、社会を考えているんだ、という自己のプライドを満たすような考え方をするようになる。これは何かに依存している人間が社会から孤立すればするほど深まる考え方で、以前書いたが、考え方が自分vs社会になってしまうくせに、自分を客観的に見ることが出来ない為に起きる、普通の人間なら仕方がない、自己アイデンティティ保存活動なのかもしれない。

で、この事件の老人。自分が攻撃された時の反撃の為に包丁を用意していた、という。映像で見る限り、こんなみすぼらしい老人を襲うような強盗はいないから、彼は自ら進んで自分が攻撃される状態に身を晒した、その覚悟があったのだ。多分、この事件の前にも歩きタバコ等注意していた可能性がある。午後電車の優先席に座るサラリーマン。それだけでも腹が立つ光景(多分、彼の脳内では優先席に健常人が座るのは許せない)なのに、タブレットを使っている。「優先席付近では携帯電話のご使用をお控えください」と書いてある車両は未だにある。老人は彼の中の正義の行動に出るのだ。最初に口頭で上からタメ口で注意をする。サラリーマンは一瞥して無視する。無視された老人は逆上。無視するな、と言わんばかりに更に激しい口調で肩を小突きながら注意する。サラリーマンは上手だ。体に触れられた事を逆手にとって「暴力な無いだろ?」質問返しで相手を追い込む。簡単に追い込まれた老人は更に逆上して包丁を取り出す。

 

本当に悲劇だ。このサラリーマンには多分ここに書いたような底辺層の人間の事を考える事は今までもこれからも必要もなく、考えも及ばないのだろう。なので、ついやり込めてしまい、追い込んでしまった。この事件を報道するマスメディア内でコメントする富裕層の人達も誰一人こういった行動の人間の事を理解しておらず、「電車内でのトラブル」で片付けていた。

 

実は私も電車内でこういう老人に合った事がある。時間はこの事件と同じように16時くらい。電車内は空いていたが、私は優先席には座らず、手すりに掴まって、少し手wを伸ばした状態で電車の出入口付近(踊り場付近)に立ってスマホをいじっていた。しばらくしたら、後ろから肩を叩かれた。振り向くと70歳半ばぐらいの老人(男)で、「ここで携帯電話使ったらダメだろ!マナーを守れ!マナーを!」といきなり怒鳴られた。ここで私の思考コンピューターが瞬時に動く。

 

・この老人が言っている事は優先席付近で携帯電話を使うな、という事

・私は出入口の前におり、優先席の手すりは掴んでいるが、少なくとも席から1m以上は離れている。

・私の外見は通常の人もケンカをふっかけるのが怖いと思われる体躯をしている。にも関わらず、いきなり喧嘩腰で因縁をふっかけてきた。

 

ピンときた。寂しい底辺層老人なのだ。であれば対処は簡単だ。(ここまで1秒)

 

満面の笑顔で「いや~、そうですよね~!すいません、今すぐ止めますね!」

 

と返答した。そうすると老人はちょっと困った。というのも、彼は因縁を付けたくて、口喧嘩したかったのだから。で、自分が正義である、という主張を思う存分したかったのだから。

「ま、まぁ・・・。みんながそうやって素直に(言う事を)聞いてくれれば・・・。」

と、これから殴りかかろうと意気込んでいた気持ちのやり場に困ってぶつぶつ言いつつ、次の停車駅で降りていった。彼の目的はいかにも外見が怪しい若者(おっさん)の私とケンカになって、「おい!降りろ!」となって、駅員も巻き込んで自分が正しい、という主張をする事まで折込済みだったのだ。正義を振りかざしてやり込める事が目的だったのだ。

彼が車両を降りてから周りと見渡すと、私の後ろで同じような場所に立っているサラリーマンはずっとスマホをいじっているし、優先席に座っていた若い女子もスマホを取り出して触り始めた。その老人は外見的に一番悪そう(?)な私をターゲットにしただけだったのだ。いかにも悪そうな人を(彼の中での)正論でやり込める事に快感があるのだ。

 

今後もこういった事は多く起きると思うし、現在多くの電車内トラブルはこういった「自分基準の正義の執行官」によって起きていると思う。ここでの底辺層は精神的底辺層が多い為、一定の収入の有無は関係ない。そして、この問題はマスメディアでも社会政策的にも取り上げられる事は今後もほぼ無いだろう。なぜなら底辺層の精神構造など普通とされる生活をしている層の人間には理解出来ないからだ。なので、根本的な問題を見落として、対処療法になり、法律や条例ばかりが増える事になるのだ。

困ったね。