底辺の見方、上からの見方

日本社会の底辺層のモノの見方、ちょっと上の層のモノの見方のお勉強

ブラックバイトも非正規雇用の問題も存在しない。あるのは日本社会の問題だけ。

正社員、非正規社員、バイト。これらは業務内容と責任に差があるだけでなく、月給制と時給制という差もある。そしてアルバイトとは一番何も守られていない立場であるから、時間で給与を発生させているという概念はとても大事。本来それらをしっかり守っていれば現在起きている雇用の問題など存在しないはずなのだ。

 

私が社員、派遣社員、アルバイトを含めて100名以上の部をまとめていた時はコスト管理を徹底していた。コストの中で一番大きいのは人件費だ。それをカットするのは当たり前。しかし、部を統括する私、複数のチームをまとめる副部長、チームをまとめるマネージャー、派遣社員とアルバイトとまとめる社員。すべてに責任の差がある。この責任の差というのは情報開示でも明らかだ。明確な業務わけをしていても業務量とクオリティ管理を徹底していくとどうしても個人に責任が乗りがちになる。そうなるとアルバイト、派遣社員を正社員にする必要があり、何人も引き上げた。その方が責任を与える事ができ、全体的に効率が良かったからだ。もちろん、会社全体がそのようなピラミッドになっているわけではなかった。しかし、私の部だけは表向きは清廉潔白でいよう、という事をスローガンにしていた。なぜならビジネスとは往々にして不条理なものだからだ。表向きも不条理だと全てがカオスになり、上司として仕切って見本を見せる事などできやしない。

 

では、今起きている雇用の問題はなぜおきるのか。それは法律の問題ではなく、日本社会がそう求めているからだ。人間を肩書で見下す事を好み、自分が他よりも上である、という相対的な事で幸せを感じる人が多い。なので平気で他人を点で見下す。アルバイトには「自分のキャリアの為」と称して時給外の宿題を押し付ける。保育士問題も同じだ。子供が好きな純粋な気持ち、などと言う人もいる。そして金の話をすると「結局金か」と言う。

 

当たり前だ。仕事でのつながりである以上、すべてを金で換算して向き合うのが人間社会の経済活動として当たり前なのだ。自分と同じ(レベルの)人間として接し、相手の時間、給与(時給)を考えつつ、マネジメントレイヤーとしてコスト管理を徹底すると、自然と同一労働同一賃金になるのだ。例えば、今は組合が出来てマシになったが、アメリカで移民が最初にする仕事とはタクシーと相場が決まっていた。学歴も職歴も必要ないからだ。そこから金を貯めて這い上がるのだ。

 

しかし、日本ではタクシー運転手が家族4人を養って一戸建てを持っている人もいる。同一労働同一賃金の概念のクオリティーでいったらありえない。それはなぜか。それは政治家が組織票の為に業界を保護しているからだ。ブラックバイトはなぜ発生するのか。アルバイト=雇う側より格下、という扱いをする人達がいるからだ。非正規雇用問題も一緒だ。正規雇用社員よりも格下が当たり前と思っている人達が多いからだ。格下も上もない。相手の人生を尊重してその時間を敬う気持ちがあれば、同一労働同一賃金は簡単なのだ。そして、これは正規雇用社員の不安定化につながる。というのも、日本では明らかな無能社員が多く存在しているがクビにする事が出来ないからだ。正規雇用社員が既得権益化しているのはタクシー業界の例と同じ。組織票だ。つまり、日本人自身が同一労働同一賃金を許さない社会を作ってしまっているのだ。

 

同一労働同一賃金が実現すればブラックバイト問題も非正規雇用問題もこれほど存在しなくなる。ほぼ独占のライフラインの子会社だからといって、メーターを見るだけのような仕事は移民の最初の仕事になるかもしれない。社員も平気でクビに出来るようになれば、無気力社員分の給与を新たな雇用に当てる事が出来るため、人材も流動化する。日本社会にとって良いことだらけだ。しかしそれらを許さないのが日本社会の問題なのだ。

 

非正規雇用関係の法律がころころ変わるのがまさにそれ。問題などそれなりのマネジメントクラスであれば誰でもわかっている。私が思うに、多分同一労働同一賃金が実現するような社会になるという事は、多くのバブル世代の社員が職を失う事になる。それに釣られ、彼らを支えて疲れきっている45歳以下ぐらいの人達も職を失うだろう。まさに社会がカオス状態になる。そしてこうなる事はずっと前からわかっていた。しかし、それを変える事は出来ないのが政治というもの。

 

バブル世代でも一部は未だに力を持っている人達がいる。そうした人達は自らの加齢による老いを認めたくないばかりに、自分達が中心でいたいという承認欲求が強い。自分達が40代になった時は「ちょい悪オヤジ」とブランド化し、50代になった今は「アラフィフオヤジの余裕がモテる秘訣」とうそぶく。気持ち悪すぎる自己顕示欲。

 

本当にブラックバイト、非正規雇用問題を解決したと思うのであれば同一労働同一賃金を実現する、自らが身を切る社会改革に賛成する必要があり、それは日本人一人ひとりが組織に属する時にはその組織にとって必要な存在である、という業務に対するプライドとスキルの研鑽を重ねる努力をし続ける必要があるのだ。毎日早く帰ってバルで食事し、食べログにせっせとレポートしている暇などなくなる事を意味する。その覚悟がほとんど社員がないのだろう。社員=既得権益=安定。多くの社員達が安寧の夢を見ているうちは立場の弱い雇用者へそのツケは押し付けられる。それらに気付いても社内改革すらしない、自らが安寧でいる役員が多い事も問題でもある。

 

という事で、雇用問題は日本社会を構成する日本人すべてが当事者であり、法律や政治家を責める問題ではない、というお話。