底辺の見方、上からの見方

日本社会の底辺層のモノの見方、ちょっと上の層のモノの見方のお勉強

2014年大晦日のIGFでの青木真也VS山本元気の試合後の騒動

大晦日は埼玉スーパーアリーナのDEEPに行っており、今日までほぼネットアクセスをしていなかったのでこの騒動を今知った。ネットに落ちている動画を見ると、山本元気選手に勝った青木真也選手が負けて方針状態の彼の横に座り、手のひらで山本選手の腹を叩きながら何か言っている。しゃべっている顔の感じから侮辱的な言葉を浴びせたっぽい。その後、山本選手は青木選手を睨みつけながらリングから降りず、しまいには負け選手なのにマイクを要求してスタンバイ。このスタンバイというのはやはり勝利選手の前にしゃべるのはマナー違反、という事だろう。そしてマイクをもった勝利者、青木選手はマイクを持って待っている山本選手を見ていたのだろう。しゃべり初めの挨拶後、

 

「おい!青木!」(山本選手)

とマイクでしゃべる山本選手を無視して

「まいったしたのに、負けてないっていうのはやめてください。」(青木選手)

と挑発。この後、なぜ山本選手がここまで怒っているのか、の真実が語られる。

「お前、最後、ざまぁ!って言ったの忘れねぇぞ!」(山本選手)

 

なるほど、負けて放心状態で寝転がったままの山本選手に青木選手は体を叩いて

「ざまぁ!」

と言ったのだ。

その後、全身真っ黒のスタッフっぽいおじさんが乱入。今戦ったばかりの山本選手の首根っこを片手で喉輪締めして

「お前はタップして負けたんだから帰れよ!」

とすごい剣幕で怒鳴り散らすこととなり、素直に聞く山本選手。動画はここまで。

 

プロレスではこういった事はシナリオとしてよくある。しかし、格闘技はプロレスではない。今や格闘技というジャンルはスポーツ競技として世界的に確立されており、その中にボクシングやMMA総合格闘技)がある。なので試合後、選手同士はお互いを健闘し、相手のセコンドに挨拶をするシーンをよく見る。試合後興奮して勝利者がアピールしている間に相手選手もセコンドもさっさと消えてしまって挨拶がない例もあるが、大抵は挨拶をする。例えば、これをプロレスのような事をするとどうなるか。

2015年1月4日にタイトルマッチがあった世界最高峰の総合格闘技団体UFCジョン・ジョーンズとダニエル・コーミエはプレスカンファレンスでカメラ外の場所で乱闘騒ぎを起こし、ネバダ州のアスレチックコミッションの公聴会に参加。ジョン・ジョーンズには5万ドルと40時間の社会奉仕活動、ダニエル・コーミエには9千ドルの罰金と20時間の社会奉仕活動の処分が下った。

なにせ大金が動き、ファイトマネーも莫大。もしかしたら罰金等のリスクを追ってでもPPVを盛り上げる為にこれぐらいする、という見方をする人もいるかもしれない。選手も生活がかかっているわけだから。ここで大事なのはこの事が選手の意図云々ではなく、アスリート関係の第三者機関が「アスリートとして相応しくない、マナー違反の行動」として罰則を科したという事だ。

 

では、先の青木真也選手のまずは肯定的に考えてみよう。

プロレスのように次のチケットの為の盛り上げの為

 残念ながら、プロレスと違って、総合格闘技が次の試合も同じ選手とやる、という事はかなり難しい。そもそも、因縁よりもアスリートとして純粋な「強さ」を要求される競技であるだけでなく、試合は命を削るような事もあり、試合数は少ない為、選手はなるべく自分に得がある相手と試合をしたい。なので、強さが拮抗し、判定ドローになった試合やトーナメント組み合わせでたまたま以前戦った事がある相手、という事ぐらいでしか再戦はほぼ無いため、次の試合の為のパフォーマンスと考えるのは無理がある。

青木真也選手をヒールキャラとして売り、格闘技業界を盛り上げる狙い

 彼は以前、廣田瑞人選手の腕を試合中折った際(この行為自体はレフリーが問題であり、青木選手が非難を浴びる事ではない)、廣田選手に向かって中指を立てて挑発行為を行った事で、かなりバッシングを受けたが、それでも彼を応援する人、総合格闘技を競技ではなく、プロレスの延長上として見ている層にとっては青木選手が未だに負けた選手を侮辱する行為に対してもしろ賞賛するだろう。では、これで格闘技業界は盛り上がるのだろうか。少なくとも、彼を応援している人はそういった行為も含めて彼を支持している人も多いのだろうが、この行為を続けたり、このように負けた相手を侮辱する事で増えるファン、とはいったいどういう事なのだろう。

 

先ほど、格闘技は既に世界的にはスポーツ競技として確立している、と言ったが、世界を出すと必ずといっていいほど「ここは日本だ!日本の基準で考えろ!」という人がいるので、世界と日本の対比で考えてみたい。

仮に日本でのスポーツ競技はヒール役が必要とする

 世界のスポーツ業界で負けた選手に中指を立てる行為や侮蔑する発言など許されないどころが罰則がある場合もある中、日本はそうでないと盛り上がらない国である、という前提のもと、プロレスを例にすると格闘技のトップアスリートの約1割くらいはヒールが必要、という感じだろうか。

日本人ボクシング王者のうち、1名はヒール役で、負けた相手に侮蔑の言葉を浴びせる。

東京オリンピックのボクシング競技で勝った日本人は相手に中指を立てる。

総合格闘技でもヒールを増やし、負けた相手を侮蔑する一定数の選手を作る。

国内柔道選手権で。国内空手選手権で。負けた選手に侮蔑を浴びせる選手が一定数容認される。

 

さて。どうだろうか、こんな日本。度重なる青木真也選手の行動を賞賛する人はこういったスポーツ社会を夢見ているのだろうか。海外でスポーツ選手がなぜ行動等に厳しい罰則があるか、というと社会的影響があるからだ。特に子供等若年層に対する影響は大きい。公人としてだけでなく、超人として人から羨望の目を浴びる人間にはそれなりの責任も負わされるのだ。いやいや、青木選手だけ特別だから、というのは甘い考えだ。その昔、長渕剛がチンピラを演じるドラマ内でタバコを投げ捨てるシーンが多くあった際、日本の義務教育中の多くの喫煙学生が真似したものだ。公人一人の行動の影響は計り知れないモノがある。

 

あえて斜め横から論じてみたが、単純にいえば先進国ではあり得ない、日本の民度の問題なので これが現実として受け入れるだけの話であって。ただ、真面目にやっている選手にとっては迷惑な事だろうなぁ。