底辺の見方、上からの見方

日本社会の底辺層のモノの見方、ちょっと上の層のモノの見方のお勉強

CXの月9「恋仲」がなぜ古くてつまらないのか

今若手No1と言っても過言ではない男優、福士蒼汰を主演に添え、バラエティ進出が明らかにマイナスに働いてしまった本田翼が本来の女優として得意の陰陽を使い分ける役柄。そして恋愛ドラマ。何が失敗なのだろうか。

 

失敗の要因1:すべての設定がトレンディドラマをそのまま踏襲している

メインの視聴者層を中年、としてマーケティングした結果なのかもしれないが、福士蒼汰が住んでいる物件には屋上があり、夜景を見ながら酒を飲み、仲間たちとBBQ。まさにトレンディドラマの世界。いくら妹とのシェアとはいえ、さすがに建築事務所の見習いレベルで住める部屋ではない。こういったリアル感から遠くはなれた感じ。まさにバブル発想すぎて、本来共感を生むべきドラマに邪魔な演出となってしまっている。タイや韓国では未だにこういった設定演出ドラマがあって、それはトレンディドラマ時代と同じで、美形の俳優にも憧れるし、こういった生活にも憧れる、というまさにトレンディ感なのだが、今の日本は10年以上続いた不景気とアベノミクスによる格差拡大で生活感に憧れる、という成長期な社会ではないのだ。いちいち夜景の素晴らしい屋上で飲む、というよりも、行きつけの中華屋や定食屋で飲む、部屋で作る、という方が今の視聴者には自然と受け入れやすいのだ。

 

失敗の要因2:恋愛に偏重しすぎている

福士蒼汰野村周平本田翼を取り合う三角関係なのだが、終始そればっかりなのだ。本田翼のお父さん問題や福士蒼汰の仕事などちょっとだけ別の話題も入るが、問題はそこではない。恋愛を元に人間性を描こうとする、古いやり方に問題があるのだ。そしてお決まりのように、主要キャストの側の脇役の友人はピエロっぽい。太賀とアジアン馬場園である。視聴者はどんな気持で見ればいいのか。山本美月新川優愛は生殺状態。

これを今風にするとしたら、福士蒼汰側に彼に負けない程のイケメンかもしくは美人の女友達(今回は市川由衣でも山本美月でもいい)が、びっくりするぐらいの優しさを持ってアドバイスをするような友情面も必要なのだ。これは本田翼側にも同じ。終始合コンの話をしているアジアン馬場園ではなく、それなりに男にモテる(本田翼とは正反対の派手さぐらい)外見の女友だちが真摯に相談に乗る友情の場面が必要なのだ。そして、野村周平がいろんな部分で意地悪をしているが、それも不要で、野村周平の最初の嘘は仕方ないとしても、それをしっかり後悔して、その罪悪感を抱えながら今度は誠心誠意、本田翼を取り合おう、という姿勢が必要なのだ。つまり、恋愛だけでなく、友情ももう一つの柱であるべきで、もちろん、その柱が仕事での成功でもいい。どちらにしても、恋愛で人間を描くのは現実、無理があるのだ。

そう、結局全員が一所懸命でいい人。これが今どきの恋愛劇であり、意地悪や愛憎などは見たくないのだ。なぜなら、事実は小説より、で現実社会があまりにも酷いから。

見ているだけでほっこりし、その心が優しさに満たされた世界観の中での壁ドンで初めてキュン死するのだ。壁ドンとは行動の要素でしかなく、世界観が大事なのだ。

現実世界では多くの視聴者が何らかのSNSをやっている。毎日辻褄の合わない不平不満の言葉を目にしている。だからこそ、作り物の恋愛の世界ぐらいはほっこり、幸せになりたい。だからこそ、少女マンガは未だに売れ続け、アニメにも映画にもなっている。

 

恋仲は作り手が視聴者をなめているとしか思えない。マーケティング偏重で頭で考える事を止めてしまった結果なのか。編成主導の結果が生んでしまった悲劇か。しかし、大手の会社ではマーケティングデータにもとづいてモノを作った場合、失敗の責任を取らされない事が多い。なぜなら、マーケティングデータに沿ったモノを作っただけだから。むしろ、個人の創造的発想で作って失敗した場合の方が責任を取らされる。

CXの混乱はまだまだ続くんだろうなぁ、と、このドラマの古さにびっくりしながら感じている。