底辺の見方、上からの見方

日本社会の底辺層のモノの見方、ちょっと上の層のモノの見方のお勉強

NHKドラマ 東京裁判1話2話

恥ずかしながら、東京裁判に関してはざっくり過去のドキュメンタリー映画を見た事があっただけであったし、もっと裁かれるべき人間が沢山いるのに、という思いが強かったから恣意的な13名のA級戦犯に興味がなかった。しかし、見た事がない2016年のこのドラマが再放送されるとわかり、事前に検索してみると、月刊正論という過激な場所に寄稿している年配弁護士のこのドラマ批評がNHK以外に一番上位に来たので見てみると

「この番組の問題点は、事実を偏向して伝えている事である。」

「日本が侵略戦争を起こしたという印象を強めるために、番組では様々な工夫を凝らしている」

おお・・・なんという事でしょう。私好みの香ばしい意見。私が知っているNHKのこれ系のドラマでそういった事がなかったので是非確認をしてみようと第一夜である1,2話を見てみた。

 

まったく違う。この感想を書いた人はどれだけ色眼鏡で社会を見ているのか。こういった人は人生に多様性が無くてある意味ストレスがたまらないのだろうなぁ、と思った。

当初A級戦犯のリストが出てきた時点でそれは「戦犯」なのだから、有罪なのが前提であとは収監か死刑か判決を決めるだけ、という一致をする。しかし、戦争での個人の罪には法的根拠が無い。後に決まった法律で決めるのは事後法ではないか、という事に法と司る判事として良心の呵責に苛まれたり、正義を行う判事としてどうなの?という疑問が一部の判事に出てくる。当初はなんとなく政治的に全会一致で東京裁判を行おうとして憲章に賛成したにも関わらず。途中からアジアの判事も入れないと不公平だろうという事でインドとフィリピンの判事が加わった事で事態は変わる。まだ法律が出来ていない中での「侵略の罪」で個人を裁く事はできるのか、という事。この事だけで1話、2話使う。

 

ここではっきり判事達の立場がわかれる。

・法律に根拠が無い事後法で裁く事が否であれば、ドイツを裁いたニュルンベルク裁判が間違っていた事になってしまう。という自己保全&自国保全組

・日本軍の残虐行為、非道行為は裁かれるべきだ、という感情的な報復組

・残虐行為は許されないが、当時の法を照らし合わせて法にのっとって裁くべきだ、という法遵守組

 

いや~、いいね。判決は反対があっても全会一致で発表され、反対論は残らない、という前提の裁判の裏側を勧めていく。もちろん、ドラマなのでフィクションの部分もあるのだろう。しかし、全員の意見を尊重するオーストラリアの判事長をイギリスなどが計略で更迭して早く戦犯を裁いて終わらせたい組とか今の国際状況を考えてもとてもおもしろい。綺羅びやかな日本での判事やゲスト達の生活(日本人が着物でめし使っている)に対比して、焼け跡に暮らす東京庶民の様子が少ないのは意図的な見せ方であり、フィクションとはいえ、イギリスからの独立を目指すインド側判事とあえて焼け跡に足を伸ばして日本人知識人と交流を持つ判事の考え方の違いを目立たせる演出。戦勝国側の目線だけで裁く事の難しさを際立たせている。

 

3、4話が楽しみだ。